昨年息子が結婚して家を出たので、今年からは夫婦二人の静かなお正月です。それでも元旦は、私の両親と娘一家の四世代夕食会で楽しく過ごしましたが、二日以降は本当に静かな家の中となりました。
1月3日は、妻と一緒に新宿末廣亭の正月初席に行ってきました。お目当ては第二部の主任(トリ)の神田松鯉師匠です。松鯉師匠は人間国宝の名人ですが、私が初めて寄席に行った新春の席で「出世の春駒」を聞かせていただき、大変春らしい目出度い気分を味あわせてくださった方です。

さて、今回は席を前売り指定で買っていたので、まずのんびりと新宿の花園神社に初詣に行きまして、そこからすぐの末廣亭に行きました。寄席は基本は前売り無し・座席指定なしの先着順。人気の演者が出るときくらいしか前売りがありません。でも、当日券を買うのに並ぶのは真冬や真夏はつらいんですよね。演芸のチケット販売には難しさもあると思いますが、屋外に並ばないで買えるといいんだけどな、というのは余談。
さて、正月初席というのは、演者の顔見せと言うこともあってか普段より出演者が多く、一席の時間も短い(10分→6分)とのこと。このせいもあってか、季節ネタ・時事ネタを絡めた近況報告のようなネタの出演者が多かったです。
- 番組出だしの漫才、 おせつときょうた。干支を題材にした正月らしいのんびりした笑いでスタート。
- その次に登場の講談・ 神田陽子は、オペラ講談「椿姫」で一気にテンションアップ。講談ってこういう文学名作ネタも有りなのかとちょっとびっくり。
- 中入り前の三席は、NHKの『東西笑いの殿堂』の生中継が入ると言うことで、一人目の玉川太福の前に諸注意が入りました。笑い声と拍手を大きくお願いしたいということで客席も練習させられて、なんだか鬱陶しいことになったぞと思ったものの、それまでまったり雰囲気だった客席のテンションが上がってかえってよかったかもしれません。
- 生中継の一席目、浪曲・玉川太福は、現代の二人の男が弁当を食べるだけと言うネタ。弁当を食べるだけなのに、朗々とした語りがドラマチックでもありユーモラスでもあってたいへん楽しく、「今回はここまでにて〜」という「置き」のタイミングも秀逸で、今回の寄席で一番楽しめました。
- 生中継二席目はマジックの 山上兄弟。以前にも末廣亭で拝見したことがありますが、その際は、兄弟の片方が欠席で、コンビなのに一人だけで演じるというちょっと苦しい状況でした。今回はコンビ揃っての出演で安心して(?)楽しめました。
- 中トリ、生中継三席目は三遊亭小遊三師匠。古典落語の東海道・鈴ヶ森の駕籠かき(雲助)が客を掴もうと酔っ払いに声をかけたら同じ話を三度聞かされることになったという話で、「蜘蛛駕籠」という演目を今回の高座の持ち時間に合わせて前半だけにカットしたもののようでした。ただ、その同じ話3回の繰り返しの芸がおかしくて、最後は大笑いしました。
- 中入り後。三笑亭夢丸)は番頭さんと小僧さんが互いに隠れて煮豆をつまみ食いする「味噌豆」の後半を取り出したと思しき話。今回の寄席では、何人かの落語家の方が小学生や幼稚園児の落語教室で子供に食べ物を食べる仕草を見せた話をされていましたが、夢丸さんの豆を食べている姿も美味しそうでお腹が減ってきました。
- 藤本芝裕は三味線と歌。「村まつり」の歌のドンドンヒャララのドンドンとヒャララをそれぞれが歌うように客席を二つに分ける客席参加の演目がインタラクティブで楽しかったです。
- 立川談幸の落語。ハイテンポの喋りが心地よくてずっとニヤニヤ聞いていて、終わったところで良かったぁ〜と思ったのはありありと思い出せるのに、話の中身が全く記憶に残っていません。こういうこともあるんだなぁ。
- トリの前、膝がわりはマグナム小林のヴァイオリン漫談。タップダンスを踊りながらのヴァイオリンに客席が大受けでした。
- そして、トリの神田松鯉師匠。話はワルの魅力・河内山宗俊が活躍(?)する「天保六花撰~玉子の強請」。河内山の役目である江戸城勤めの御数寄屋坊主は大名旗本にお茶の振る舞いをする立場というのですから、今で言えばVIP御用達の会員制高級クラブの支配人のようなイメージでしょうか。礼儀作法に精通し、しかもVIPの裏事情まで抑えるという硬軟・清濁を併せ持った通人という、日本のドラマでは古典的なダークヒーロー像ですね。この河内山宗俊が、りゅうとした身なりでパワハラ商人の店に現れ、玉子を使った(ちょっとせこい)トリックで懲らしめる、という話。この話は松鯉師匠の弟子である神田伯山が演じる一席も聞いたことがあり、聞くのは2回目ですあんまり正月っぽい話ではないなと思いましたけど、。松鯉師匠の河内山が声を荒げることが一切ない、まさにザ・インテリヤクザという雰囲気で格好良かったので満足しました。