8月のお盆の週の火曜日、新宿で用があるため休みをとり、その後、末廣亭の昼の部を見てきました。
夏休みとはいえ平日の昼間なので空いているかなと思っていたのですが、とんでもない。開演時間を間違えて遅れていったら、一階席はほぼ満員で最後に残った桟敷席になんとか潜り込ませていただきました。
今回のお目当ては、音曲の桂小すみ師匠です。「音曲」というのは、三味線に合わせた歌とトークを組み合わせた演芸というのが私の理解。過去、二回、小すみ師匠の高座を楽しませいただておりまして、今回は三回目になります。
最初に小すみ師匠の演物を観たの初めて末廣亭に行ったときでした。寄席では落語や漫才のようなしゃべり芸以外の演芸、いわゆる色物も楽しめるのですが、色物というものに馴染みがなく、音曲というものも何をする演芸なのかまったくわかっていませんでした。三味線を持った小すみ師匠が登場したときは、これは単に三味線を弾いてくれる演芸?三味線ってよく知らないんだけど楽しめるかな?などと思ったことを憶えています。
始まりますと、小すみ師匠はのトークはけっこうテンションが高くて、正直最初はあっけにとられて観ていたように思います。しかし、いったん三味線と歌が始まると、その声と三味線の力強さとなめらかさ、艶っぽさにすっかりまいってしまいまいした。
その後、末廣亭には何回か足を運んだのですが、小すみ師匠の高座はもう1回しか遭遇できず、これは、狙っていかないと観られないなと思っていました。その小すみ師匠が8月中席に高座に上がられるということに気づきまして、これはぜひまた拝見したいと足を運んだのがこの日です。
今回の桂小すみ師匠の出演順は、トリの春風亭昇太師匠の一つ前。このトリの一つ前の出順は「膝代わり」というのだそうです。膝代わりとは、トリの落語の前に観客の視点や姿勢を一度リセットすることを意味し、落語とは異なる姿勢で見る演芸が演じられるのである、ということを今回の記事のために調べて初めて知りました。
それで、今回の小すみ師匠の演物ですが、曲数としては三曲。
登場直後は、隅田川を渡って帰ってしまう男について唄った都々逸。この都々逸の「隅田川さえ棹さしゃ届く、なぜに届かぬわが思い」というフレーズが七七七五調という日本語にとって大事な調子なのですよ、という話から、なぜか、隅田川から大河つながりでラ・プラタ川に話が代わり、演じられたのは小すみ師匠オリジナルの「ピラニアの塩焼き」。
謎のタイトルは、ピラニアよラ・プラタ川を逃げた男を食べてしまえ、そして、そのピラニアを塩焼きにして自分が食べる、という熱い恋情を表したもの。タイトルだけではなくかなりぶっ飛んだ歌詞でしたが、この発想のフリーダムさが魅力的です。三味線でアルゼンチンタンゴを引きこなすアレンジと技も素晴らしかったです。
その後、ハッピーエンディングとして「ともに白髪の生えるまで」の古典を唄いあげて締め。
小すみ師匠の唄をもっと聴きたいところですが、YouTubeなどにはそれほど上げていらっしゃっていないようです。その中から、小すみ師匠の発想と技の魅力がうかがえる一曲「愛しのカレー」をリンクさせていただきます。こちらは、小すみ師匠の電子ピアノ+三味線+ピアニカにゲストのバスサックスを加え、インドっぽい旋律でカレー作りを歌うという、発想とテクニックの合わせ技が光る作品です。(この記事上では再生できないので、リンク先に飛んで、ぜひご覧ください)