週末文書

とりあえず、まぁ、週末です。

女性科学者が主人公のSF映画二編『コンタクト』『メッセージ』

今週、AmazonPrimeでSF映画を2本みたのですが、偶然、どちらも女性科学者が主人公のものでした。

「コンタクト』

一本はちょっと古い『コンタクト』(1997)。ジュディ・フォスターが演じる女性科学者エリーが発見した宇宙人からの電波信号の内容は恒星間移動装置の設計図でした。その設計図を元に作成された装置に主人公が乗り込み異星人との出会いに臨むのだが……というストーリーです。

映画のテーマは、神と異星人という存在を証明できない2つの存在についてどう考えるかというものです。主人公は、科学者として存在の証拠を示せない神の存在を信じることはできないという態度を貫きますが、逆に自分が出会った異星人について存在を証明できないという立場に追いやられます。映画では、主人公が自分の信念を大勢の前で表明しなければならない場面が何度も出てきますが、そのたびにジュディ・フォスターの美しく凛とした表情が映画に力強さや説得力を与えているように思いました。これを男性主人公に置き換えたら同じような印象を受けるのか、ひょっとしてそもそも映画として成り立たないのではないかなどと考えさせられました。

「メッセージ」

もう一本の映画は、『メッセージ』(2016)で、主演はエイミー・アダムス。『マン・オブ・スティール』や『ジャスティス・リーグ』などの<DCエクステンデッド・ユニバース>シリーズでロイス・レインを演じていた人です。

映画のストーリーは、テッド・チャンの傑作SF短編「あなたの人生の物語」をベースにした、地球を訪れた異星人とのファースト・コンタクトもの。主人公は異星人の言語を分析する言語学者という役柄です。

原作短編では舞台背景がほとんど描写されていませんが、監督のドゥニ・ヴィルヌーヴは、無人の緑野にシンプルな形状でモノトーンの異星船を浮かべて、単純ながらひどく印象的な舞台を作ってくれました。異星船の内部も、岩のような生き物の皮膚のような質感のグレーの壁面に囲まれた四角い通路と異星人と向き合うための「窓」しかないという、よく言えばミニマル、正直、地味な絵面の映画でした。

原作のストーリーは、それを使いこなす存在は未来と過去を同じように認識できるようになるという異星人の言語を軸に、その言語を分析する主人公が、まだ妊娠もしていない自分の娘の誕生から死までを経験するというものです。生まれてもいない娘が若くして死んでしまうことを知って、それでも娘を産む同じ人生を送るのか、という運命論・決定論と人間の自由意思の関係を描いた短いながらも印象的な作品で、私も大好きな短編作品です。

しかし、正直、設定もストーリー展開もややこしいし、映画の絵柄も「地味」で、興行成績的にどうなのかな、という気がしていました。映画を見たあとWikipediaを見ると、興行成績は結構よかったようで、どういう層に受けたのかちょっと不思議です。原作を読んでいるとストーリーで戸惑うことはなかった(映画で付け加えられた部分は除き)のですが、映画だけ見た人は展開をスムーズに飲み込めたのでしょうか。

このストーリーは、娘を産む母親=女性、という主人公の立場が重要なので、必然的に主人公は女性科学者となります。演じたエイミー・アダムズは(コンタクトのジュディ・フォスターと逆の)柔らかで真面目な印象で、映画全体のシンプルで中間色的な柔かなイメージと雰囲気がよく合っていたと思いました。

偶然、女性科学者が主人公のSF映画を2本続けてみたのでもう一本、と思ったのですが、思い当たりません。他にも女性科学者が主人公のSF映画を見つけたら見てみたいです。